第12章 つぶやき【おそ松】
それは、数年前の記憶が見せた夢だった。
わたしは、高校生で、着ている服も高校時代に毎日のように袖を通していた紺色のセーラー服。髪も当時そうだったように黒髪ロング。
わたしは、放課後、教室で本を読んでいた。
高校時代、わたしは、よく、部活のない日は遅くまで教室にのこって、ひとり本を読んでいた。
本は、昔から大好きだった。
流行の小説や、恋愛小説、推理小説、海外文学、なんでも読んだ。
だから、放課後の暗い教室で、誰にも邪魔されずに読書をするのは、わたしの至福の時間だったのだ。
日が落ちて、灯りがないと文字が読めなくなってきたころ。
「今日はなに読んでるの?」
ひょいと、突然、読んでいた本を取り上げられた。
わたしの本をとった犯人は、これまた高校生のころの……
顔がわからないけれど、6つ子のだれか。
学ランの前ボタンを全開にしているため、中に着ている校則違反のカラーパーカーが丸見え。
でも、そのパーカーの色も、薄くて曖昧だ。
「あれっ… なんでここに?」
『ん? なんでって?』
「もうとっくに下校の時間だよ? どうしてまだ帰ってないの?」
『あー……なんとなく?』
彼は、そう言って、歯を見せて笑った。
『家に帰ってもすることないし』
「そっか。まだ帰らないの?」
『うーん。ほんとはそろそろ帰るつもりだったけど、気が変わった』
彼の手が伸びてきて、わたしの手をつかんだ。
「……?」
『屋上、行こう。付き合ってほしいんだ』
思い出せない。
このときわたしの手を引いたのは、
誰だったっけ。