第8章 お仕置き【チョロ松+一松】
翌朝、目を覚ますと、隣にカラ松くんの姿はなく、居間にも誰もいなかった。
一週間前と同じだ。
そっと布団を抜け出して、二階を覗きにいく。
しかし、そこにも誰の姿もなかった。
つまり……この家にいるのは、わたし一人。
「みんな……どこに行ったんだろう」
買い物? パチンコ?
帰ってくるまでに何時間かかる?
全員一緒に出かけたんでないとすれば、誰が最初に帰ってくる?
わたしは、玄関に向かった。
玄関に置かれている、固定電話。
受話器を手にとって、ダイヤルを回せばいい。
それだけで、外の世界と通じる。
わたしは、震える手で受話器を取り上げた。
後のことなんて、考えていなかった。
ただ、魔がさした。
それだけだった。
しかし。
「さくらちゃん……なにしてんの」
背後から声をかけられて、わたしは反射的にそちらを振り向いた。
そこに立っていたのは、
チョロ松くん。そして、一松くん。
ぞわっと、背筋を冷たい汗が流れていく。
「あ……こ、これは、その」
一松「へえ。その電話、どこにかけるつもりだったの」
「ち、ちが……」
チョロ松「ちがう? なにが? どこかに電話かけたかったから、受話器を手に取ったんだろ?」
チョロ松くんの手が、わたしの手首をつかみあげる。
手から受話器が滑り落ちた。
一松「あ……そっか、そういうことか」
「え……?」
一松「昨日の夜、カラ松に抱かれて、自由になりたくなったのか」
「いっ、一松くん!? 見てたの!?」
一松「自由になれば、カラ松とも付き合えるもんね」
チョロ松「でも、そんなの許さないよ。ごめんね、さくらちゃん」
チョロ松くんは、口角を吊り上げて笑った。
その笑顔は、まるで悪魔のようで……わたしは、本能的に危険だと悟った。
「ふ、ふたりとも、ごめんなさいっ! ごめんなさい、許して……!」
一松「……って言ってるけど、どうする?チョロ松兄さん」
チョロ松「うーん、どうしようね、一松」
一松「あ、でもさ、チョロ松兄さん、前に言ったんだよね? 逃げ出そうとしたら、手錠でも鎖でも使って雁字搦めにするって」
チョロ松「ああ、そうだったね。そういう約束だったな」
そう言って、チョロ松くんは、背後から手錠を出した。