第7章 夜長の秘密【カラ松】
カラ松「さくらのご両親は、まだ帰ってこないのか?」
カラ松くんにそんなことを訊かれたのは、夕食のあと、居間でみんなでテレビを見ているときだった。
やっぱり、と心の中で呟く。
やっぱり、カラ松くんは、わたしがここで生活している理由を知らないんだ。
「そ……そうなの。なかなか帰ってこなくて。まいっちゃうよ」
おそ松「たしか、お祖父さんが倒れたんだっけ。大変だよな〜」
「そうそう。ほんと、大変……」
おそ松くんの話に合わせてうなずくわたしを、カラ松くんは、なんともいえない無表情で見つめている。
「ど、どうしたの、カラ松くん」
カラ松「悪いんだが、ちょっとさくらと二人で話がしたい。さくら、外に散歩にでも行こう」
「えっ……」
わたしは、とっさに他の5人を見た。
わたしがこの家で生活し始めて一週間。その一週間、わたしは、家から一歩も出ていなかった。
きっと、外に出たいと言っても許してもらえないだろうと思い、その願望を口にすることもしなかった。
しかし。
おそ松「いいじゃん。行ってくれば?」
おそ松くんの言葉に、わたしは目を見張った。
まさか、許してもらえるなんて。
「おそ松くん……いいの?」
おそ松「なんだよ、それ。別にオレに許可とるようなことじゃねーだろ」
おそ松くんは、そう言って、軽快に笑った。
カラ松「ありがとう、兄貴。さくら、支度したら行くぞ」
「う、うん」
こうして、わたしは、カラ松くんとふたりで散歩に行くことになったのだった。