第49章 あなたに貰ったもの《おそ松END》
なんとかおそ松くんから抜け出そうと身体をよじるも、がっしりと手首をつかまれて、ますます深く口づけられてしまう。
「んんんッ……んッん…!」
息ができなくて、苦しくて、生理的な涙が頬をつたう。
意識が遠のいたその瞬間、おそ松くんはようやく唇を離してくれた。
「っはぁ……っ、はぁ…」
おそ松「…わるい。無理させすぎた」
おそ松くんは、わたしの目を真っすぐに見据えて、小さく言った。
おそ松「ごめん。俺、だめなんだよなあ。俺たち以外の男がさくらに近づこうとしてると……こう、かーって頭に血がのぼって、どうしようもなくなっちゃうんだよね」
「……」
俺『たち』以外、か。
おそ松くんが、わたしを自分のものではなく、自分『たち』のものにしたいだけだということは、なんとなく分かっていた。
だから、わたしが誰と身体を重ねようが、首にキスマークをつけていようが、まったく怒らないし気にしない。
この人を好きになったって、そんなのは不毛な恋なんだ……
おそ松「……さくら?」
「おそ松くんは……っ、」
気付けば、目から冷たいものがぼろぼろと溢れ出していた。
「おそ松くんは、わたしをどうしたいのっ……? わたしをおそ松くんたちの……みんなのお人形にしたいだけなのっ?」
おそ松「は……はあ? なんだよ、それ。急になに言い出すんだよ」
「だって……だって……!」
言ってしまいたい。
けど、言えない。
おそ松くん『1人』にヤキモチをやいてほしいなんて。
みんなのものじゃなくて、おそ松くんのものにしてほしいなんて。
そっか。
わたし、やっぱりこの人のこと、
好きなんだ……
思えば、あの日、ホテルでいつになく寂しげで今にも消えてしまいそうなおそ松くんを見てから、わたしはずっとこの人のことばかり考えていた。
この人を、好きになってしまったんだ……