第47章 夏祭り【カラ松+トド松】
「んー……遅いなあ、おそ松くんとチョロ松くん」
ぼーっと遠くを眺めながら、手持ち無沙汰に下駄で地面を軽く蹴る。
からん、という下駄の音が鳴る。
そんなわたしの横を、幸せそうに寄り添うカップルや、大はしゃぎの子供たち、楽しそうな家族連れなんかが通り過ぎていく。
今日は、ここ、赤塚神社で行われる花火大会の日。
わたしは、浴衣を着て、下駄を履いて、いつもはおろしている髪の毛もアップにして、精一杯着飾ってきた。
本当は、来るつもりはなかったのだけれど、6つ子のみんなが、どうしてもわたしと花火大会に行きたいっていうから……
だから、こうして頑張ってお洒落して来たのに……
「もう〜っ、遅すぎるよ……どこで道草くってるんだろう」
こんなことになるなら、一緒に家を出ればよかった。
おそ松くんが、「待ち合わせするカップルの気分を味わいたい」とか言い出すから、こうして一人で会場まで来たのに!
ちなみに、今日は、2時間ごとに一緒にまわる人を変えて行動する予定。
最初の2時間は、おそ松くんとチョロ松くん。
次の2時間は、一松くんと十四松くん。
そして、最後の2時間は、カラ松くんとトド松くん。
最初は、7人で一緒にまわろうと思ったのだけれど、さすがに7人で行動したら誰かがはぐれて迷子になりそうだったから、こういう形に落ち着いた。
???「だ〜れだっ」
不意に、目の前が真っ暗になり、息をのむ。
けれど、すぐに、目を手で覆われたことに気がつく。
「はあ……遅いんだけど。何してたの、おそ松くん」
わたしは、その手を掴み、ぐるっと後ろを振り向く。
と、へらへらと笑うおそ松くんと目が合った。
その隣には、相変わらずの困り顔のチョロ松くんがいる。
ふたりは、それぞれ赤と緑の甚平に身を包んでいる。
チョロ松「ごめんね、さくらちゃん。遅くなって」
おそ松「悪いなー。結構待ったっしょ?」
「待ったどころの話じゃないよ…! もう帰ろうかと思った!」
おそ松「そう怒んなって。はい、これでも食って機嫌なおして?」
そう言っておそ松くんが差し出してきたのは、
真っ赤なりんご飴。
「え……?りんご飴?」