第2章 再会【一松、おそ松+十四松】
連れ込まれた路地裏。
突き当たりにはブロック塀が高くそびえ、背後には背の高い男が立ち、わたしは、完全に逃げ道を塞がれていた。
まずい、と思った。
『なあ、オネーチャン。あんた、自分が何したかわかってんの?』
突き当たりのブロック塀に背をもたれている二人の男のうち、一人が、吸っていた煙草を地面に落とし、足でぐりぐりと踏みつぶしながら言った。
とたん、背後の男に腕をつかまれ、羽交い締めにされる。
「くっ……ぅ」
『可愛い声だしちゃって。そんな声だせば許されると思ってんの?』
ことは、さかのぼること30分前。
わたしは、大きなキャリーケースを引きずりながら、大通りの歩道を歩いていた。5年前に住んでいたこの街に対する懐かしみと、この街で始まる新たな生活に、胸をときめかせながら。
そう、わたしは、5年前まで住んでいたこの町に、今日戻ってきたのだ。
今日から、わたしは、またこの町で暮らせる。幼少期から高校時代までの思い出がたくさん詰まったこの町で。
だから、その嬉しさのあまり、ちゃんと前が見えていなかったのだと思う。
わたしは、前から来る3人組の男に気付かなかった。
そして、運が悪いことに、キャリーケースの車輪で、男の一人の足をひいてしまったのだ。
ごめんなさい、とわたしが口にするよりも早く、男の手がわたしの胸ぐらを掴んでいた。
わたしは、なす術もなく、この路地裏に連れ込まれ、そして今に至る。
『オネーチャン。俺たちが誰だか知らないでしょ?』
そう言って、男は、自分の頬を指でスーッとなぞった。
引っ越してきて早々、ヤクザに絡まれるなんて、最悪だ。
「ごめんなさい……ちょっとぼーっとしてて」
『ぼーっとしてただァ? そんな言い訳で俺たちが許すとでも思ってるワケ?』
『きちんとした方法で謝罪してもらわねえとなァ』
男の一人が、ブロック塀から背中をはなし、こちらへ近づいてくる。
そして、わたしの前で立ち止まると、
ビリィィィィィ!!
わたしの着ていたブラウスを一気に引き裂いた。