第32章 期待《トド松END》
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ベッドにふたりで横たわって、情事の余韻にひたる。
指と指を絡ませ合って手を繋ぎ、唇が触れ合いそうな距離で話をする。
トド松「……ね、さくらちゃん。ありがとね」
「ん? なにが?」
トド松「ホテルついて来てくれて…… 居酒屋だって僕のわがままだったのに、その上こんなところまで……」
「ううん…いいの。わたしも、もうちょっとトド松くんと一緒にいたかったし」
それは、本当だ。
トド松くんと一緒にすごす時間は、すごく楽しい。
それに、……なんだか、落ち着くんだよね。トド松くんと一緒にいると。
でも、そのことは言わない。
だって、きっと、その言葉は、トド松くんを期待させてしまうから。
トド松「……ふふ、ありがと。ねえ、シャワーあびたら、もう1回シてもいい?」
トド松くんは、わたしの耳元に、甘い声で囁いた。
「えっ、もう1回!? トド松くん、眠くないの…?」
トド松「うん、ぜーんぜん♪ それに、こういうことできるのも、今日で最後だからさ」
「…………えっ?」
トド松くんの口から発せられた言葉に、一瞬、頭が真っ白になる。
最後……?
それって、どういう意味?
「トド松くん……?」
トド松「僕、やっぱり最後までさくらちゃんのことが大好きなままだったなあ……はは、だめだね、こんなんじゃ」
「トド松くん、なに言ってるの……?」
トド松くんは、まだ酔いが冷めていないのか、わたしの質問を無視して、言葉をつづける。
トド松「さくらちゃんのこと、大好きだったよ。むりやり抱いちゃうくらい……さくらちゃんが好き」
「……トド松くん」
トド松「でも、このままじゃダメだって、ずっと分かってたんだ。だから……もう終わりにしようね」
トド松くんは、そう言って、わたしにキスをした。
彼が何の話をしているのか、わけがわからないまま、わたしは、トド松くんのキスを受け入れるしかなかった。
胸が、亀裂が入ったかのように、ぴりぴりと痛んだ。