第31章 僕を選んで《トド松END》
カラ松「……難しい質問だな」
カラ松兄さんは、首をひねって、うーんと考え込んだ。
意外だ……いつものカラ松兄さんなら、さくらの美しさが俺を惑わしたとかイタいこと言い出すのに。
カラ松「そうだな……正直、自分でもよく分からない。でも、気付いたときには好きになってた」
トド松「ふうん……」
やっぱり、本気で好きになると、どこが好きとか答えられないものなのかな。
確かに、僕も、「どこが好きなの?」と問われたら、上手く返せる自信がない。
でも……言われてみると、このふたり……
どうして高校時代にくっつかなかったんだろう?
誰がどう見ても両想いだったのに。
そのあと、少し風が強くなってきたので、僕たちは釣りを切り上げて帰路についた。
結局、今日は全然釣れなかった。
僕は、カラ松兄さんみたいにクソしょうもない手紙じゃなくて、ちゃんと魚の餌をつけてたのに、何故かカラ松兄さんのほうが釣れていた。
……あんな手紙に寄ってくるとか、バカでしょ。魚も。
でも、考えてみると、やっぱり、生き物は、誰かの愛情に寄っていきたくなるものなのかも。
だって、愛するより愛されるほうが幸せだってわかっているから。
さくらちゃんも……僕がもっと優しくしてもっと愛情を注いだら、僕のことを好きになってくれるのかな。
そんなことを考えてしまい、必死に頭をふってその考えを追い出す。
やめやめ。そんなこと考えたって虚しいだけだ。
だって、しょせん、さくらちゃんが僕のことを好きになってくれるなんて、有り得ないんだから。