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【おそ松さんR18】君がため

第29章 泣きたいときは《十四松END》




もうどうすればいいのか、わからない…

どうすれば十四松くんを笑顔にできるのか… どうすれば十四松くんを救えるのか…

だって、こんなの二律背反だ。どうすることもできない。


だから、わたしは、ただただ十四松くんを抱きしめ続けた。

十四松くんを腕の中で泣かせてあげることしか、今のわたしにはできなかった。






一松「ねえ、さくら。その手首の包帯……なに?」


一松くんに気付かれたのは、翌日のことだった。

包帯を隠すためにつけていたリストバンドを、洗い物をするときにはずしてそのままつけ忘れていたのが原因だ。


わたしが答えられずにいると、一松くんは、わたしの手をつかみ、階段裏の物置に引っ張っていった。

そして、中にわたしを引き入れると、内側から扉をしめた。


一松「……ねえ、もう1回訊くから。その包帯、どうしたの。なんの怪我?」

「その……猫に引っ掻かれちゃって……」

一松「猫……?」

「そう……その……一松くんの猫じゃなくて……この前、十四松くんと出かけたときに道ばたで会った猫で……」


わたしが必死に嘘を並べ立てていると、

不意に、顎をつかまれた。


目が合った一松くんは、怒ったように眉間にしわを寄せていた。


「……どうしたの、一松くん?」

一松「さくらってさ……嘘つくときわかりやすいんだよね。目が泳いでて、必死に頭の中で言葉を組み立ててる顔して、絶対に僕のほう見ないから…」

「……っ」

一松「…で、ほんとはなんなの? この包帯」


一松くんは、血がにじんだ包帯を指差して、再び威圧的に言った。


「……」


わたしは、答えられなかった。

だって、本当のことなんて言えるはずがない。


すると、一松くんは、はあ、と小さく溜め息をついた。


一松「……ま、こんなとこ怪我するなんて有り得ないし、自分で切ったってわかるけどさ……」

「……そ、それは……」

一松「隠さなくていいよ。こんなの、バカでもわかるし」


そして、一松くんは、わたしの背中に手を回し、優しく抱きしめてきた。


「……いちまつくん?」

一松「さくらがそんなに思い悩んでるなんて、知らなかった…」

「……?」

一松「ごめんね」


え…? なんで一松くんが謝るの?

そう言いたかったけど、言葉が出なかった。



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