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【おそ松さんR18】君がため

第29章 泣きたいときは《十四松END》




けれども、バカなわたしは、カラ松くんのその言葉に縋るしかなかった。





夜中、みんなが寝静まったのを見計らって、布団を抜け出し台所に向かった。

そして、果物ナイフを拝借し、床にぺたんと座った。


十四松くんは、死んでしまった動物たちの痛みを感じるために、リスカをすると言っていた……

だったら、わたしは、その十四松くんの痛みを知りたい……


果物ナイフを手首にあて、すーっと引く。


「っ……痛ッ」


ナイフは、意外と切れ味が鋭くて、簡単に細い傷ができた。

傷口から、じわじわと赤い血があふれてくる。


「……はあ…はぁ…は…ぁ…」


歯をくいしばり、もう一度、手首を傷つける。

今度は、もっと強く、もっと深く。


「……つ…ッ」


痛い……痛い、痛い、痛い……

十四松くん、……あなたは、この痛みにいつも耐えているの?


「痛い……よぉ……っ」


痛苦に顔が歪む。

傷口から溢れ出した赤い血が、ポタポタと床にたれて、小さなしみをつくっていく。


「痛い……っ、じゅうしまつく……」


3本目の傷をつくったところで、耐えきれず、わたしは果物ナイフを床に取り落とした。

そのとき。


???「痛い? でもね、あの子たちは、もっと痛かったし苦しかったんだよ??」


声がして振り向くと、いつのまにか、十四松くんが立っていた。


「十四松くん……っ」

十四松「さくらちゃん、それ、どうしたの? ぼくの真似したの?」


十四松くんは、わたしの左腕を指差した。


「…十四松くんの気持ちが…知りたくて…っ」

十四松「そっかあ〜、嬉しいな。さくらちゃんがそんなふうに思ってくれて」


十四松くんは、わたしの目の前に腰をおろして、わたしの頬を両手で包み込んだ。

そして……


「ん…っ、う」


久しぶりのキスだった。


唇を離すと、ふたりの間にきらきらした糸が引いた。


十四松「でも、だめだよ。さくらちゃんは、一回ぼくを裏切ったんだから」

「裏切ったつもりは……っ」

十四松「だから、もっと切ろう? もっと、さくらちゃんの血が見たいなあ」


十四松くんは、果物ナイフを床から拾い上げると、

それをわたしの右手に押し付けた。



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