第28章 守りたい《十四松END》
「だめっ! 十四松くんッ」
わたしは、ふたたび十四松くんの手をつかんだ。
しかし、十四松くんの力には敵わなかった。
十四松くんは、思いきりわたしを床に叩き付けると、わたしの上に馬乗りになった。
十四松「ねえ、さくらちゃん? さくらちゃん、前に言ったよね? ぼくの抱えてるものを自分にも分けてほしい、って」
「そ、それは……っ」
十四松「だからさ、これ、半分こにしようよ? ね? そしたら、きっとあの子も、もっと喜ぶとおもうんだー」
十四松くんは、わたしの腕を掴みあげると、
そこにつー、とカッターを滑らせた。
「……ッ」
腕が切れて、赤い血が滴った。
けれども、今は、この腕の痛みよりも大事なことがあった。
「十四松くん……十四松くんがリスカしてた理由は、これだったの?」
十四松「うんっ! そーだよ?」
「じゃあ、可愛がっていた動物が死ぬたびに……その動物と同じ苦しみを感じるために、こんなことしてたの……?」
十四松「ねえ、何が言いたいの?さくらちゃん?」
十四松くんの顔色が変わった。
けれども、わたしは、構わずにつづけた。
「こんなことをしたって、動物たちは喜ばないよ…! 十四松くんがこんなことしてたら、死んでしまったみんなだって、心配で天国に行けないよ…!」
十四松「……っ」
「あの仔犬だって……十四松くんがこんなふうに傷つくことを願ってなんかない! あの子は――」
十四松「さくらちゃんのうそつきッッ!」
突如、十四松くんは、わたしの言葉を遮った。
その瞳から、大粒の涙があふれだす。
十四松「自分にも分けてほしいって言ったくせに!! ぼくの力になってくれるって言ったくせに!! うそつきうそつきうそつき」
「十四松くん、あれはこんな意味で言ったわけじゃ――」
十四松「もう出て行って!」
腕をつかまれて無理矢理立たせられた。そして、そのまま、廊下に突き飛ばされた。
その衝撃で、わたしは、かたい床に尻餅をついた。
「痛っ……」
十四松「もうさくらちゃんのことなんて信じない」
ぴしゃりと目の前で扉を閉められた。
わたしは、完全に拒絶されたのだ。
「十四松くん……」
閉められた扉にむかって、呟く。
わたしは、どうしたらいいの……?