第28章 守りたい《十四松END》
それからというもの、わたしは、十四松くんと一緒にあの物置小屋に行って、仔犬のお世話を手伝うようになった。
もちろん、このことは、みんなには内緒。わたしと十四松くんだけの秘密だ。
仔犬は、すくすくと順調に育っていた。
十四松くんが見つけたときは、かなり弱っていたみたいだけど、今ではかなり元気そうに見える。
もうそろそろお散歩に連れ出せるかも……と思っていた、そんな矢先のことだった。
わたしと十四松くんが、いつもどおりごはんをあげるために物置小屋に行くと、仔犬がぐったりとしていた。
なにが原因なのかは、よくわからなかった。
けれども、仔犬が危険な状態であることは確かだった。
はっはっ、と荒い呼吸を繰り返す仔犬をそっと抱き上げて、十四松くんは、俯いた。
十四松「…ごめんね」
十四松くんは、泣きそうな声でつぶやいた。
どう言葉をかければ良いかわからず、わたしは、その場に立ち尽くすことしかできない。
十四松「痛いよね? 苦しいよね? でも、ぼく、どうしてあげることもできないんだ……」
「十四松くん……」
十四松「さくらちゃん……お医者さんには連れていかないで。たぶん、この子、もう助からないから……。最期はここで一緒にいたい……」
「うん……」
そう答えるのが、精一杯だった。
それから、十四松くんは、ずっと仔犬を抱きしめていた。
わたしは、そんな十四松くんと仔犬をただじっと見つめることしかできなかった。
仔犬が息を引き取ったのは、それから1時間ほど経ったときだった。
わたしたちは、仔犬の亡骸を抱えて、河原に行き、その暖かな土に仔犬を埋めた。
十四松くんは、静かに泣いていた。
それにつられて、わたしも泣いた。
やっぱり、可愛がっていた動物が死ぬのって、悲しいし嫌だな、と思った。
昔、犬か猫を飼いたいとお母さんに言ったとき、『お別れするときが嫌だから、絶対にだめ』と言われたのを思い出した。
……こういうことだったんだね。
あのときお母さんの言っていたこと、すごくよく分かった。
「十四松くん、帰ろう……」
わたしが手を差し出すと、十四松くんは、それを黙って握った。
わたしたちは、無言のまま、手を繋いで帰路についた。