第3章 誰にもわたさない【トド松】
居間のすみで膝を抱えて、わたしは泣いていた。
一松くんに襲われたのが、きのうの日中のこと。
そして、つい一時間前、今度はおそ松くんと十四松くんに襲われた。
もう何がなんだか分からない。なんでこんなことになってしまったのか、これからどうすればいいのか、何も考えられない。
トド松「ただいま〜……って、あれ?」
居間の障子ががらりとひらき、中にトド松くんが入ってくる。
トド松くんは、おしゃれなニット帽に今流行りのジャケットを着ている。たぶん、デートか何かから帰ってきたのだろう。
「トド松くん……おかえり」
トド松「さくらちゃん、どうしたの? なんかぐったりしてない?」
「あ……そ、そうかな」
トド松くん……あなたはわたしの味方なの?
それとも、おそ松くんや十四松くんみたいに、わたしをここに閉じ込めようとしてるの……?
トド松「兄さんたちは?」
「おそ松くんと十四松くんはさっき出かけたよ。他のみんなは知らない」
トド松「そっか……お客さんなのに留守番させちゃってごめんね。何か飲む?紅茶かコーヒーで良ければ、淹れてくるよ」
あ……やばい。なんか、わたし、泣きそうかも。
トド松くんの優しさが、痛いくらい胸にしみる。
「ううん、飲み物はいいや。でも、ちょっと話がしたいから、ここに座ってほしい」
トド松「ん……? 話? なになに、僕で良ければ聞くよ」
トド松くんは、わたしの隣に腰をおろした。
「あのね……トド松くん」
トド松「うん?」
「わたしね……」
そこまで言いかけて、ふと、この子が6つ子の末っ子であることを思い出す。
トド松くんは、口ではみんなのことをバカにしていたけど、きっと誰よりもお兄さんたちを尊敬しているはずだ。
わたしが、そのお兄さんたちから強姦されたなんて言ったら、トド松くんはどう思うだろう? きっと、すごく傷つくはずだ。
トド松「……さくらちゃん?」
「ごめん……やっぱりなんでもない」
わたしが首を横にふった次の瞬間。