第25章 好きになってもいいですか《チョロ松END》
チョロ松くんは、優しい。
チョロ松くんは、あったかい。
チョロ松くんは、お母さんみたいに世話焼きで、いつだってわたしのことを労ってくれる。
……そう、スイッチが入ってしまったときを除いて。
チョロ松「さくらちゃーん。布団干すの手伝ってー」
2階でチョロ松くんがわたしを呼んでいる。
その言葉どおり、布団を干していて、それをわたしに手伝ってほしいのだろう。
「まってー!今、行く!」
わたしは、見ていたテレビを消して、よいしょと腰をあげた。
階段をのぼって、2階に行く。
と、寝室のベランダにチョロ松くんがいた。
チョロ松くんは、兄弟の布団をベランダに引っ張り出して、それを物干し竿に干そうとしている。
けれども、兄弟全員が並んで寝れるほど大きな布団を、チョロ松くんが一人でどうにかできるはずもなく。
チョロ松くんは、ふらふらとよろめきながら布団と格闘していた。
「っと……大丈夫?チョロ松くん」
わたしは、危なっかしいチョロ松くんを、うしろから支えてあげた。
チョロ松「あっ、ありがと、さくらちゃん…」
「こんなの一人で干そうなんて無理だよ。カラ松くんとか十四松くんならまだしも、チョロ松くん、細くて折れちゃいそう」
チョロ松「なにそれ……バカにしてる?」
チョロ松くんは、じとーっとした目でわたしを睨んだ。
「うそうそ、冗談だよ」
チョロ松「でも、たしかに、僕一人で無謀だったかもね。いつもはおそ松兄さんが手伝ってくれるんだけど」
「おそ松くん、新台がどうとかで朝早くに出掛けちゃったもんね…」
チョロ松「……あんのパチカス」
チョロ松くんは、ぼそっと悪態をついた。
それがなんだか可笑しくて、くすくすと笑ってしまう。
「ま、仕方ないよ。ふたりで頑張って干そう?」
チョロ松「うん。ごめんね、さくらちゃん」
謝る必要ないのに。
わたしは、今、自分の意思でこの家にいるも同然なんだから。
せめて、家事くらいは手伝わせてほしい。