第21章 愛してる、だから…《一松END》
それから、一週間ほどの入院を経て、一松くんは松野家に戻ってきた。
カラ松くんは、相変わらず家には帰ってきていない。
そして、あの事件以来、どういう心境の変化なのは分からないけれど、他の兄弟たちは、わたしに身体を求めなくなっていた。
退院してきた一松くんは、まだ本調子ではないようで、毎日二階のベランダで、煙草を吸いながらぼーっとしていた。
日課である猫の餌やりも、他の兄弟に任せているみたい。
だから、その日。
おそ松「なーなー! 今夜は外食にしねえ?」
おそ松くんがそう言い出したとき、一松くんは、少し浮かない顔をした。たぶん、外に出たくないんだろう。
チョロ松「そんなこと言って、今日自分が夕飯の当番だから、つくるの面倒なだけだろ…」
おそ松「あ、ばれたー?」
ニシシ、と笑うおそ松くんに、チョロ松くんは呆れたように溜め息をつく。
トド松「…でも、いいんじゃない?たまには外食でも。最近、チビ太のとこにも顔出してなかったし」
十四松「たしかにー!」
下ふたりもおそ松くんの意見に賛同し、チョロ松くんも折れたところで、今夜は外食をすることになった。
……が、
一松「俺はいいや…」
一松くんは、居間の隅っこで膝を抱えて、ぽつり呟くように言った。
おそ松「んー、どしたの、一松。どっか具合わるい?」
一松「いや……別にそういうわけじゃないけど」
たぶんだけど、一松くん、長い間入院していたせいで、なまけ癖がついてしまったんだと思う。
今まで、一日ベッドの上で寝て過ごして、勝手にごはんが運ばれてくる生活を送っていたのだから。
「じゃあ、一松くん、今日はわたしと一緒に家でごはん食べよう?」
おそ松「えーっ!さくらも来ねえのかよーつまんねー」
チョロ松「ていうか、おそ松兄さんがちゃんとごはん作れば済む問題だからね」
おそ松「それはいやだー!めんどくせー!」
子供のように駄々をこねるおそ松くん。
チョロ松「じゃあ、一松とさくらちゃんは留守番ね。ほら、いつまでも床を転げ回ってないで。行くよ、おそ松兄さん」
十四松「やったあー!!おでんおでん〜!」
4人は、ぎゃーぎゃーと騒ぎながら、家を出て行った。
家の中は、急にしんと静まり返ってしまった。
……なんか、変なかんじ。