第19章 わたしの気持ち《一松END》
Side 一松
僕がさくらと出会ったのは、高校1年生のとき。
高校に入学して、学校も、教室も、クラスメイトも、制服も、教科書も、何もかもが新しくなって…
そして、僕は、さくらと出会い、自分の中の『新しい』感情に気がついた。
さくらは、明るくてフレンドリーで、誰からも好かれるような子だった。
顔がずば抜けて美人なわけではない。
スタイルがいいわけでもない。
でも、さくらには、言葉では言い表せることのできない魅力と、人を惹き付ける力があった。
それは、まるで、蝶を誘惑する花のように。
僕も、さくらの甘い花の香りに引き寄せられた一人だ。
とは言え、僕みたいなコミュ障が、自ら女の子に話しかけるなんて絶対に無理。
だから、僕は、いつも教室の隅、窓際の自分の席に座って、勉強をしているふりをしながらさくらを観察していた。
……見ているだけで幸せだった。
だから、いいよね?
見るだけだから……迷惑をかけたりしないから……
これくらいは許してほしい。
僕は、心の中で神様に許しを請いながら、毎日、さくらの姿を写真におさめた。
だから、その年の夏、
カラ松兄さんがさくらを家に連れてきたときは、正直、身体が震えた。
「はじめまして……って言うべきなのかな?同じクラスの梅野さくらです」
さくらは、そう言って、僕たち兄弟に頭を下げた。
初めて間近で見るさくらは、きらきらしていて、すごく眩しかった。
「あっ、待って。わたし、誰が誰なのか当てられる自信あるから!」
さくらは、そう言って、左端にいるおそ松兄さんから順番に、
「あなたはおそ松くんでしょ? いつも先生に呼び出されてるよね」
「それで、あなたがチョロ松くん。生徒会に入ってるでしょ? わたしの友達がよくチョロ松くんのこと話してるよ」
「あなたは十四松くん。パーカーの袖がいつもだぼだぼに伸びてるからすぐわかるよ」
と指を指し、そして、最後に僕に目を移し、にっこりと笑った。
「あなたは、一松くん。めちゃくちゃ頭がいいって噂の秀才くんでしょ」