第15章 ふたりで【カラ松】
カラ松「さくらが付き合っているのは、一松なんだな?」
夕飯のあと。
突然、腕をひかれて連れてこられた廊下。
ふたりきりのその空間で、カラ松くんは、そんなことを口にした。
「え……?」
一瞬、なんのことか分からず、硬直してしまう。
でも、すぐに、この前一松くんとシているところをカラ松くんに見られたことを思い出した。
「ああ……えっと、それは」
カラ松「正直、さくらと一松がそういう関係だったことはショックだ。でも、それには何か事情があって、さくらが好きなのは俺……なんだよな?」
カラ松くんは、眉を垂れて、不安げな、今にも泣き出しそうな顔で、わたしを見つめた。
その表情に、どきっと胸が高鳴る。
「あの……そ、その……」
なんて言えばいいんだろう。
一松くんとは付き合ってないと、本当のことを言うべき?
それとも、ここは一松くんと付き合っていると嘘をつくべき?
だって、もし一松くんとは付き合っていないと言ったら、じゃあどうしてセックスをしていたんだという話になる。
少なくともカラ松くんには、そんな誰とでも寝るビッチな女だとは思われたくない……
カラ松「さくら、ちょっと来て」
そんなことを考えていると、ぐいっと腕をひかれた。
カラ松くんは、わたしの腕を掴んだまま、歩き出す。
そして、わたしたちは、そのまま二階へ。
「カラ松くん……どうしたの」
カラ松「この中に入って」
「え……?」
カラ松くんが指差したのは、二階にある押し入れ。
ここに入れって……どういうこと?
「どういうことなの? この中に何かあるの?」
カラ松「いいから」
強い語調で言われて、わたしは、言われたとおりにするしかなかった。
押し入れの中に身を滑り込ませる。
と、わたしの後に続いて、カラ松くんも押し入れの中に入ってきた。
そして、彼は、押し入れの扉をぴしゃりと閉めた。
「……ちょ、ちょっと。カラ松くん」
カラ松「さくら……」
カラ松くんの腕が、
わたしを抱きしめた。