第12章 つぶやき【おそ松】
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気がつくと、部屋の中は灯りが消えて暗くなっていた。
どうやら、あのあと、いつのまにか眠ってしまったようだ。
シャワールームから、シャワーの音がきこえてくる。
首をひねってそちらに目をやれば、シャワールームから灯りが漏れていた。
おそらく、おそ松くんがシャワーをあびているのだろう。
わたしは、シャワールームに背を向けて、ぎゅっとシーツを握りしめた。
こんなことじゃダメだって、自分でもわかってる……
でも、もうどうしたらいいのか分からなかった。
わたしは、おそ松くんを、……いや、おそ松くんだけじゃない、みんなのことを、愛しいと思い始めている。
「ぐす……う、く」
涙があふれてきた。
と、そのとき。
シャワーの音がとまった。
あわてて涙をとめて、寝たふりをする。
少しして、シャワールームの扉がひらいた。
おそ松「さくら……? 寝てる?」
おそ松くんが、わたしの背中に話しかけてくる。
それは、いつになく優しい声で。
思わず振り向きたい衝動にかられた。
しかし、次の瞬間。
おそ松「……さくら」
ぎゅっと。
背後から抱きしめられた。
おそ松「さくら、ごめんな……俺、もう自分でも何がしたいのか分かんなくなってきたわ」
自嘲気味に、そんなことを呟くおそ松くん。
思わず、身体がこわばった。
なに言ってるの。こんなのおそ松くんらしくないよ。
そう言いたかった。
でも、言えなかった。
きっと、おそ松くんは、わたしが寝ていると思っている。だからこそ、弱音をもらしたんだ。