第2章 Episode1【出会いは突然に】
「あの……大丈夫、ですから」
「ダーメ、そんなに体冷やしてるのに何言ってんの」
そう言って、手触りのいいタオルを、手渡してくる九条さん。それを突き返すことも出来ず、結局受け取る私。
ああ、どうしてこんな状況になったんだっけ?
*
今から遡ること30分前。
私はよく行く近所の公園に来ていた。特に用はないけれど、気紛れに訪れては、一人ベンチに座りながら空を見上げてた。
……雲で星も月も見えないや。
暗く静かな公園で、少し肌寒さを感じながらも、空を見ていると、ポツリと冷たい雫が頬を濡らした。
「雨……」
呟いた時にはもう遅く、全身を打ちつけるように、降りしきる雨粒が体をを濡らした。 傘……持ってきて無い。
一瞬そう思ったものの、たまには雨に打たれるというのもありかも知れない。考えがそこに至った時、ふと歌いたいなと、思った。
考えに突き動かされるように、誰もいない公園で、雨に打たれながら思いのままに言葉を紡いでいく。
「~♪」
どのくらいそうしていたのか、髪も服も……全身がずぶ濡れになった頃。
歌うのが楽しくなってきて、ここが人目に付く公園である事も忘れてしまっていた。
だから、声を掛けられるまで気が付かなかった。
「……楽しそうに歌うんだね」
ずっと見られていたことに。
「っ……!」
人が居た事に驚き、声が出なくなる。
驚きのままに、声の方を向いて――呼吸ができなくなりそうになった。