第3章 三日月 -月の満ちはじめ-
東京と比べると、こっちの夏はだいぶ涼しく感じる。
けれど、そんな気温にもすぐ慣れてしまって、気温が30度を越さない日でも、うだるような暑さだなと感じるようになってしまった。
はっきりとしたコントラストを見せてくれる夏の色は好きだ。
けれど、この暑さだけはどうにも受け入れがたい。
冷房の涼しさが苦手な私は、朝起きるとすぐに扇風機をつける。
どちらにせよ体には良くないのだろうけれど、無風の中で朝支度をするのが難しかった。
いつもの通勤電車に乗り込むと、なんとなく人が少ないと感じる。
少し視線を左右させると、毎日がやがやと飽きもせず喋り倒している学生の姿が、今日は見当たらないことに気づいた。
あぁ、世間は夏休みなのか。羨ましい。
でも、電車が空いているのはいいことだわ、なんて思って、空席にその身を下ろした。
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