第3章 三日月 -月の満ちはじめ-
簡単に夕食を済ませると、同じタイミングでニュース番組が終わった。
やがてバラエティ番組が始まると、それをBGMに食器を片づけたりと家の中の事を済ませる。
バラエティ番組を見て笑うことはあるけれど、翌日になったら内容なんて忘れている。そんな程度のものだ。
一通り家事を終えてソファに体を預ける。
笑えない番組を無意識に変えていたら、見覚えのある映像が目に入った。
"地上波初放送"と銘打たれたその映画は、なるほど記憶に新しい。
あれは、どれくらい前だったったけ。
二年だっけ、三年だっけ。
もう曖昧だけれど。
共に暮らした彼とデートで行った映画館。
『暗い場所で二時間もふかふかの椅子に座ってたら眠くなる』という理由で、映画館は好きじゃなかったけれど、ペアチケットだと安いからさ、という理由で彼に着いて行った映画だった。
スパイものの物語。
何作もシリーズ化されている作品。
今度最新作が公開されるらしいから、このタイミングでテレビ放映をしたのだろう。
当時、私は案の定ラスト三十分のところで熟睡してしまって、主人公がどういう結末を迎えたのか見届けることが出来なかった。
彼に聞いても『寝たお前が悪い』と教えて貰えないままで、そりゃそうだ、私が悪いわ、と追及することもなかった。
特に、興味が無かったから。
何気なく見始めた映画は、ところどころ記憶と重なっていた。
あの頃興味がなかったせいで、ほとんどのシーンが初めて見たような感覚だったけれど。
そんな風に思いながら、気づけば私はその映画をじっと鑑賞していた。
いよいよラスト三十分、今度こそ結末をみてやろう。
---その時だった。
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