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【赤髪の白雪姫】きみの瞳に恋をする

第6章 交錯する想い


イザナに口を塞がれて、嫌でも薬が喉を通っていく。

すっかりその液体を飲み干したというのに、いつまでたってもイザナが離れない。

『んーっ…んーんー!』

抗議の声をあげたいが、口を塞がれ、ただ唸るだけしかできない。
もう、息が苦しい。
ぎゅうっと抱き締められているせいで、身動きも取れず、このままでは、本当に窒息死しそう。


「失礼ながら兄殿下、瀬那殿が酸欠のようです。」


オビから救いの一言が降ってきた。
イザナの肩越しに、そのオリーブ色が目に映った。

(………え。)


それは感情の読めない冷たい視線。

――――こんなオビの顔、初めて見た。


オビに気をとられていると、不意にイザナから唇が開放された。

『ぷ…はぁっ…っいたっ…はぁっ……。』

思わず一気に酸素を肺に入れれば、肩の傷から痛みが駆けた。


イザナがオビへと向き直っていた。

「先日、我がクラリネス王国の東の端にて強盗団を捕らえたと聞いているが、それは君のことか?」

自分の身体が強張るのがわかった。

「畏れ多くも、我が主ゼン殿下の指示により派遣され、偶々彼等が悪行を働く場に居合わせましたので、そのまま捕らえた次第です。」

最敬礼の姿勢でオビがイザナに伝える。
簡潔で偽りのない内容だった。


「…そうか、それはご苦労だったな。下がるがよい。」

イザナのロイヤルブルーが鋭く光った。

「失礼致します。」

オビは腰を深く折り曲げたままの姿勢で、短く答え、部屋を去っていった。


「さて、薬室長。私は瀬那に話があるのだが、城の自室に連れて帰ってもいいかな?」

イザナの言葉は疑問型ではあるけれど、有無を言わさない、肯定のみを必要とした問いだった。


薬室長は、部屋で安静にしていれば自室に戻ってもいいが、薬をきちんと摂取し、日に一度は薬室へ様子を診せに来ることを条件に、首を縦に振ったのだった。
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