第2章 木兎夢
日曜日の午前中。
今私は、体育館にいる。
どうしてこんな場所にいるかというと・・・
『あのさ、梟谷に超カッコいいバレー部の人がいるの!日曜日の試合見に行きたいんだけど・・・ついてきて!』
先日、放課後の教室で、親友に拝み倒された。
「え〜面倒くさいよ〜。私バレーなんかよくわかんないし」
そう断った。
けれど、
『そっかー、実は体育館の近くに新しく出来たクレープ屋さんのタダ券があるんだけどなぁ〜』
そう言って、券をチラつかされ、まんまと食欲に負けて今に至る。
「バレーなんか興味無いのになぁ」
ブツブツと独り言が沸いて出る。
“まぁ、これ終わったらクレープ屋さんだし”
チョコレート?キャラメル?フルーツ系もいいなぁ、なんて、勝手に妄想にふける。
2階の観客席に座ってつまらなさげにしている私とは正反対に、最前列で手摺に掴まって食い入る様に見入っている親友。
「本当、相変わらずイケメン好きなんだから」
『いや、イケメンは確かに好きだけど、今回のはただのイケメンじゃないから!冷静沈着で頭もよくて、何て言っても女っ気が無いところがまた・・・!』
「はいはい、わかったから」
このまま長くなりそうだったので、話を終わらせる。
親友は昔からミーハーだ。
様々なタイプのカッコいい人に弱い。
かく言う私は、好きなタイプは?と聞かれても、はっきりと決まってない。
ただ、イケメンにキャーキャー言うミーハータイプでは無い事は確かだ。
好きなタイプが固定されておらず
「好きになった人がタイプ」という、何だかハッキリしない感じ。
まぁ、まだ本気の恋愛をしてないってのが本当の所なんだろうけど。
そんな風にぼんやり考えていると、「あ!来た!」と呟く声がした。
どれどれ、と友人の隣に身を乗り出してみると、黒髪に流し目、落ち着いた表情の人が立っていた。
「あの人??」
『そう、あの人!赤葦さん!技術とセンスはピカイチ!2年生だけど副主将なんだから!』
と得意気に話す。
“あー、なるほど。モテそう”
嫌味でも何でもなく、単純にそう思った。
全体的にソツなく何でもこなせそうな感じ。
そう思っていたら、一際大きな声が館内に響いた。
「ヘイヘイヘーイ!テンション上がってきたぜー!」