第9章 一押し二金三男 \❤︎/
いつも冷たいはずの高杉の手がなんだか今は少し熱く感じた。
「…気のせいだろ」
「大丈夫ですか?具合、悪くありませんか?」
「悪くねえよ。……ったく」
さらに後ろでクスクスと笑い出す雅を高杉は睨みつける。
その姿を見ていると具合は悪くないんだな、と思った。
「さ、そろそろお暇しましょ。お金も貰ったし、あなた達だって早く二人きりになりたいでしょう」
雅の言葉に凛は顔を赤くしながらサッと俯くと、今度は高杉が楽しそうにフッと笑って立ち上がった。
「そうだな…帰るぞ、凛」
高杉は編笠を手に持つと玄関に向かって歩き出した。
その後を追って慌てて凛も玄関へと向かうと、見送りをしてくれる雅に頭を下げた。
「雅さんっ!今日はありがとうございました。また雅さんに会いたいです」
「高杉さんと仲直りできたみたいでよかったわ。また何かあったらいつでも来ていいのよ。」
「はい!では!」
「またね。高杉さんもあんまり凛さんいじめちゃダメよ?」
「…テメェら二人で何話してた」
「晋助様には秘密です!」
雅に見送られながら引き戸を開けて外に出ると、なんだか外の世界が少し違って見えるような気がした。
まだ外は少し明るくて、陽の光が眩しい。太陽がいつもより輝いて見えた。
「…また晋助様に御恩ができてしまいました」
「…?」
「晋助様にはいつも助けてもらったり与えてもらってばかりです。だからわたしも少しでも晋助様に恩返しがしたいです」
まだ明るい道を二人並んで歩く。
途端に高杉に対する想いが溢れてきて、感謝と同時に少し切なさが込み上げた。
「…そんなもんいらねえよ」
「…え?」