第9章 一押し二金三男 \❤︎/
改めて見てみると、一面に金箔や金糸の刺繍が施されたとても繊細な柄だ。
幾らするのかも知れない。
未だにこんな高価なものを貰うことに躊躇いを感じるが、今回は高杉の好意だと思ってありがたく受け取ろうと思う。
そう思って、凛は優しく帯に触れた。
「…一つ教えといてやらァ」
「…なんでしょうか?」
高杉はまた窓枠に寄りかかりながら腰を下ろすと、凛のその帯を見ながら言った。
「帯はそいつの格を表す。いくら着物で着飾っていても帯が安物じゃあ全て台無しってモンだ」
「そうねぇ…帯の格とはよく言ったものだわ」
またさらに帯をまじまじと見つめる。
゛帯の格 ゛
この話を聞いてからなんとなく先程とは違ったように見えた気がした。
選んでくれた帯にも、こんなメッセージが含まれているのだろうか。
「欲しがってただろ。」
気にしてくれていたのだろうか。
こんな些細な優しさがとても嬉しくて、凛は熱くなった目頭を抑えた。
「はいっ…ぜんぶぜんぶ大事にしますっ…!」
「泣くんじゃねえ。せっかくの顔が台無しになるだろうが」
高杉にそう言われ、ぐっと涙を堪えて優しく目尻の涙を拭う。
そして涙よりも笑顔を見せようと、凛はめいっぱい高杉に笑ってみせた。
「っ………」
「………あら、」
その一部始終を見ていた雅は口元に手を当ててクスリと笑いながら言った。
「あなたもそんな顔するのねぇ」
「…うるせえ」
雅の言葉に、少し切羽詰ったように感じたのは気のせいだろうか。
それになんだか……
「晋助様、なんだか手が熱いです…」