第9章 一押し二金三男 \❤︎/
「さぁ、高杉さんも待っているし、そろそろ行くでありんす」
「あのっ!」
立ち上がろうとする雅を、凛は後ろから止めた。
「なあに?」
「…雅さんに一つ聞きたいことがあるんです」
雅がこちらを向くと、凛は続けた。
「…雅さんは晋助様が指名手配されている攘夷志士だということは知っているんですよね?」
「もちろん。」
「……なのに、」
「…?」
「………なのに、なぜ晋助様に協力するんですか?………指名手配されている人の手助けをするなんて…」
凛は雅の顔色を伺いながら恐る恐る聞いた。
雅はなんと答えるだろう。
「…怖いも何も、高杉さんはわたしのお得意様よ。それに、国光さんの友人なんだから怖いわけがない」
「………」
雅は、凛の質問に不思議そうに答えてみせた。
「…それに何より」
「……?」
そして一拍置いて、またあの艶かしい微笑みと溜息混じりにこう付け加えた。
「………男前、だからかねぇ…」
「……っ」
妖艶に笑った雅の顔は楽しそうで、同時に凛の目には少しだけ寂しそうに映った。
…高杉に、国光の面影を重ねているのだろうか。
「ほら、行くよ」
「…はいっ!」
締め切られた襖を開けて、元の部屋に戻ると高杉はただ胡坐をかいて外を眺めながら暇そうにしていた。
だが襖が開いたことに気付くと、高杉はチラッとこちらを向いて不意に目が合った。慣れないこんな姿を見せるのが少し恥ずかしくて、凛はすぐさま目をそらして顔が見えないように俯く。
「どうだい?凛さん、とっても綺麗でしょう?」
高杉の反応を見るのが怖くて、凛はさらに手で顔を覆った。
高杉は今、どんな顔をしているのだろう。