第9章 一押し二金三男 \❤︎/
「でもこれ以上わたしが喋るのは無粋ね。」
「…見つからねえと思ってたんだがな。見つかっちまったのは誤算だったぜ」
柄にもなく少し照れくさそうに言う高杉に、思わず目頭が熱くなる。じんわりと涙が溢れてきて、知らないうちに滴が頬を伝った。
「……晋助様っ…」
「…ンだよ」
「…晋助様、ありがとうございますっ……わたしっ」
その気持ちだけでも嬉しくて、胸がじーんとあったかくなった。
それと同時に勘違いをしていた恥ずかしさと申し訳なさも湧き上がってくる。
「わたしっ…晋助様がこんなことしてくれているとは知らずに勝手に勘違いして……ごめんなさいっ……」
「…ンなこたぁどうでもいい」
「…ごめんなさい……ありがとうございますっ…」
「泣いてんじゃねえ。ガキかってんだ」
「…うっ、晋助さまぁっ……」
素っ気ないけれど優しい言葉に、止めようと思ってもまた涙が溢れてくる。それを見て、高杉は凛の体を強引に引き寄せた。
その光景を雅は微笑ましそうに、けれど少し寂しそうに眺めていた。
「それより早く着替えろ」
「はいはい。じゃあ凛さん、奥の部屋に。高杉さんはしばらく向こうで待っていておくんなんし」
高杉に急かされると、雅は凛を奥の部屋に通した。
そして着物一式を持って高杉には見えないように襖を閉める。その部屋はたんすと鏡台のみのシンプルな部屋だった。
「じゃあまずは脱いでくれるかしら」
着ていた着物を脱いで肌着一枚の姿になり、邪魔な髪を簪で結い上げる。
相手は女の雅とはいえ、少しだけ恥ずかしかった。
「…あら、痕だらけね」
「…え?」
「昨日は熱い夜だったみたいね。ならよかったわ」
雅の言葉の意味が分からなくて、凛は首を傾げた。
だが、雅は凛のうなじや鎖骨など、わざと本人には見えないように痕が付けられていることを悟ってクスクスと笑った。