第9章 一押し二金三男 \❤︎/
思わず背筋が凍りそうになった。
「いけません!こんなにたくさん、わたしも困ります!」
「何回言やぁ分かんだテメェは。気にすんなって言ってんだろ」
「こんな高級な着物をこんなにたくさん、幾らになるかお分かりですか!?」
「分かってらァ。ほらよ」
すると高杉は懐から大量の札束を取り出した。
こんなに束になった札は見たことがない。さらに背筋が凍りついた。
「晋助様!!!ダメですっ!!!」
「うるせぇ黙っとけ」
顔面蒼白で慌てる凛を黙らせるように、高杉は自分の口で凛の口を封じた。
「んんんっ!」
「あらま」
雅が目の前にいてもお構いなしに舌を差し込む。
最初は抵抗していた凛も、貪るように口内を味わってやれば蕩けた表情で高杉に身を寄せた。
「んっ、はぁっ………」
「……ッ」
「アンタたち、そういうのは他所でやっておくんなんし」
雅が呆れたように言えば、高杉はさらにご満悦な様子だ。
息が上がってハアハアと小さく息をする凛を抱いて雅に札束を差し出した。
「晋助様ぁ……ダメですってば……」
「払っちまった」
高杉はニヤッと笑うと、またチュッと凛の額にキスを落とした。
「でも高杉さん、こんなにたくさんいらないわ。お釣りがくるわよ」
「釣りはいらねえ。その分今着付けてやってくれや」
「全く、せっかちねぇ」
雅はため息をつきながら奥の部屋に戻ると、帯と帯揚げ、帯締めを持ってまた戻ってきた。
「さ、凛さん、奥の部屋にどうぞ」
「で、でもぉ……」
「人の好意を受け取るのも大切よ」
「好意が大きすぎます!」
「それだけ凛さんが好きってことよ。だからあの高杉さんがここしばらくわたしのところに通ってたんだから」
「………え?」
だからあの高杉さんがここしばらくわたしのところに通ってたんだから?
何をするでもなく、高杉はその様子を黙って眺めていた。