第9章 一押し二金三男 \❤︎/
高杉は持っていた着物を全て雅に渡すと、雅はそれを一つ一つ丁寧に物色し始めた。
「…あら、高杉さんお目が高いわね。全てこの世に二つとない一品よ。総絞りのものまであるじゃない」
「総絞りー!?」
「帯も簪も豪華なものばかりね。」
凛が慌てて見てみると、浮き彫りの地柄に総絞りの着物が紛れ込んでいた。決して地味ではないが、落ち着いた品のある雰囲気のものだ。
「…あ、そうだ。頼まれていたやつ、出来上がってるわよ」
そう言うと雅は奥の襖の部屋から一つの着物を持ってくると、その朱色の着物を広げて見せた。
全体的に牡丹や桜、御所車が描かれ惜しげもないほどに金の装飾や刺繍が施してあり、生地もとても良質なものを使ってある。地柄にもこだわりぬいたものだと見て取れた。
……明らかに、これがこの部屋に置いてある全ての中で一番高価だ。
「昨日仕立て上がったの。もう、高杉さんが絶対これがいいっていうから急いで仕立てたんだから」
「悪いな、だがこれが一番だろ」
「ええ。確かに、よく似合いそうね」
高杉も仕立て上がった着物を見て満足気だ。
その顔を見て凛も満足感に浸っていたが、一気に我に返る。
まさか、これをどうするつもりなのだろうか。
「これもまとめて貰っていく。勘定だ」
「まいど」
すると雅はまた一つ一つ高杉から渡された着物などを目でじっくりと見ながら値を数え始めた。
幾らかは分からないが、背筋が凍るほどだと容易に想像できる。凛はたまらなくなって高杉に訴えかけた。
「あの、晋助様?まさかこれ全て購入されるわけではないですよね…?」
「買うに決まってんだろ」
「!!!???」