第9章 一押し二金三男 \❤︎/
「晋助様!一枚だけで十分ですので!」
「うるせえ。黙って選べ」
軽くあしらわれてしまって、凛は困った顔で高杉の背中を見つめた。
「まぁ…いいんじゃないかしら。高杉さんがいいって言ってるんだし、そんなに遠慮することもないと思うわ」
「でもっ…こんな高価なもの…」
「確かにかなり値は張るわね。でも不器用なりのあの人の優しさなのよ。今回くらいは受け取ってあげたらいい」
結局、その後も高杉は凛の言うことに聞く耳を持たずに数十枚の着物を持ってきた。それに合わせて帯や帯揚げに帯締め、そして簪などを合わせるととても大量だ。
見ると高杉の好みなのか、どれも贅沢に装飾が施してあるとても高価なものだと、もはや値段を見なくても分かる。
「とりあえず持ってきた。どれがいいんだ」
「……えぇ」
こんなにたくさん選ぶだけでも困ってしまう。
だがどれもとても凛の好みにもあっていて、選べないほどに素敵なものばかりだった。
「どれもとても素敵で…晋助様はどれがいいと思いますか?」
「…………」
凛の問いかけに高杉はしばらく考え込むと、
「……選べねえ」
「……ですよねぇ」
「なら全部貰ってくか。おい吉野、これ全部買うぜ」
「……え、………えぇ!!??」
まさかの高杉の決断に凛は頭がおかしくなりそうだ。
正直、何を言ってるんだろうこの人はとさえ思う。
「お待ちください、晋助様!」
「なんだ?」
「なんだではありません!一枚でも恐れ多いのにこんなにたくさん、しかも着物だけでなく帯や簪までいただけません!」
「しつけえんだよ、お前は」
「話を聞いてください!」