第9章 一押し二金三男 \❤︎/
「…吉野」
「はぁい?」
「揃ってるか?」
「揃ってるわよ。向こうの部屋」
雅は親指で奥の襖を指さすと、高杉は凛を連れて家の中にあがった。
「頼まれていたのもあるわよ」
「あァ」
高杉は頷くと、雅は目の前の襖を開けた。
「……わぁ…!」
すると、そこには目を見張るほどの着物の数々があった。
「どうぞお入りください、高杉さんに凛さん」
雅に通されて入ると、想像以上に広いその部屋には数え切れないほどの豪華絢爛な着物があって、眩しいくらいだ。
それだけでなく、部屋の奥には大量の帯や帯締め、帯揚げや簪が置いてある。
「こんなにたくさん…どうしたんですか?」
「…全国から取り寄せた。好きなものを選べ」
「え?」
高杉の言っている意味がよく分からなくて、凛は再度高杉に問いかけた。
「だから、好きなものを選べって言ってんだ。こんだけありゃあテメェの好みの一つや二つあんだろ」
「……え?…………え?」
未だに言っていることが分からない。着物を選んでどうするつもりだろうか。
「あ、誰かにプレゼントですか?わたしはセンスがないので雅さんに選んでいただいたほうがいいかと思います!」
「違え。テメェにだって言ってんのに何で吉野が選ぶんだよ」
「…………」
「だから、高杉さんが凛さんにプレゼントってことよ」
…プレゼント?
「まずは高杉さんの好みのものを選んだら?」
「…そうだな」
その場に立ち尽くしていると、後ろに立っていた高杉と雅が部屋の中に入って着物を物色し始めた。