第9章 一押し二金三男 \❤︎/
扉を叩くとあの女性であろう、女の人の声がして、高杉はガラッと引き戸を開けた。
「いらっしゃい。高杉さん。……と、凛さんね」
扉を開けたそこに居たのは、紛れもないあの女性だった。
女は引き戸を限界まで開けて二人を迎え入れると、ニッコリと笑って見せた。
「二人が来るのを、ずっと待ってんした」
「待たせて悪いな」
「大丈夫。…あ、あなたが凛さん」
女は凛を見るなり凛に近寄って肩に触れた。
「……あの、」
「あんまり驚かすなよ。凛が怖がってんだろうが」
「あら、ごめんなさいね」
凛は恐る恐る女の顔を眺めた。
近くで見れば見るほどに綺麗な女性だ。
それは女の凛でさえ惚れ惚れしてしまうほどだった。
「…ん?なあに?」
その美しさにぼーっと見とれてしまっていたらしい。
いきなり女に声をかけられてびっくりして、凛は高杉の後ろに隠れた。
「そんなに警戒しないで。わたし、ずっと凛さんに会いたかったのよ」
「…え?」
会いたかったとはどういうことだろうか。
高杉に視線を送ると、
「お前に会いたかったんだと。ほら、紹介してやれ」
「吉野雅でありんす。どうぞ、ご贔屓に。」
その女ーーー雅は、言うと凛の前で深々と頭を下げた。
「雅と呼んでおくんなんし」
「…雅さん」
今日は葡萄茶の着物に身を包んだ雅は、どこか高杉と似た雰囲気を感じる。
本当に見惚れてしまうほどだ。