第8章 あわよくば \❤︎/
「最初からデキてねえよ。お前が勘違いしてるだけだろうが」
「……は、」
「確かにここ最近、ずっとあの女に会ってた。だがあの女にお前と同じような感情は持ってねェ。その理由も明日になれば分かる」
「…てことは、晋助様はあの女の人が好きなわけじゃないんですか?」
「だから最初からそう言ってんだろ」
「…ふぇ…」
「ったく、そそっかしい姫さんだな」
そう言われた途端、何かが解けたように不意に涙がこぼれた。
「わたしてっきり晋助様があの女の人とっ…」
抱きつこうとすると、抱きとめて優しく頭を撫でてくれる。
それがたまらなく嬉しかった。
「不安にさせたのは悪かったな」
「…晋助様のバカ」
「あァ?」
「なんでもありませんっ」
「…嫉妬してたんだろ?可愛いところもあるじゃねえか」
「もう!妬いてなんかいません!」
「ならさっきのはなんだ?嫌いにならないでください、だろ?」
「〜〜〜!」
高杉は凛の反応を楽しんでいるようで、遊ばれているのがたまらなく悔しい。
けれど今はそれすらも幸せに感じた。
「…けれど、理由は明日なんですか?」
「あァ。明日になれば分かるさ」
「…じゃあ明日までガマンします!」
とにかく、今はホッとした。
やはり、自分の勘違いだったらしい。
泣きながらあんな台詞をはいて、一人だけ先走ってしまったのが今さらたまらなく恥ずかしい。
「…凛」
「…はい」
「好きだ。嫌いになんてならねえよ」
「…嬉しいです。ありがとうございます」
凛の体を優しく引き寄せて抱き締める。
体の震えはもう止まり、温かいぬくもりだけを感じられた。
そして凛の幸せそうな顔。