第8章 あわよくば \❤︎/
「…オイ凛」
無言を貫いていると、それに耐えかねたのか先に高杉が口を開いた。
「お前、」
「…ごめんなさい。晋助様の邪魔をするつもりはなかったんです。ただ…見てしまったら耐えられなくなって、晋助様が幸せならそれでいいって思ってたのに……」
「………」
「でもっ、ほんとは晋助様があの女の人が好きなんだって知ったらたまらなく悲しくて、涙が止まらなくて…あの女の人はわたしと違ってとっても綺麗で、晋助様とあの女の人…すごくお似合いだったから……何も言えないっ……」
涙も、高杉に対する想いもとめどなく溢れる。
もう惨めに思われてもいい。
そう思って言いたいことを全て吐き出した。
「…本当は胸が張り裂けそうなんです。…それでもわたしはここにいたいです。ワガママなのは分かっています。……でもっ…晋助様が大好きですっ……だから、わたしのこと……嫌いにならないでください…っ」
大粒の涙を流しながら今にも消えてしまいそうな声でそう言った凛の体は小刻みに震えていた。
「…凛」
たまらなくなって、高杉はそんな凛の体を抱き締めた。
「……しんすけ、さま…」
「…悪いな、不安にさせちまって」
涙がおさまるように優しく背中をさすってやる。
すると凛は嗚咽を漏らしながらすっぽりと高杉の腕に収まっていた。
「…だが、それはお前の勘違いだ」
「………へ?」
「どうせお前は、俺があの女とデキてるとでも思ったんだろう」
「…えっ?」
「小っ恥ずかしい台詞を吐いて残念だが、デキてねえ」
「…え?………え?」
いきなりの高杉の言葉に、さらに頭がこんがらがる。
どういうことだろう。