第8章 あわよくば \❤︎/
「……会いに来てくれたんですか…?」
「あァ。」
「…っ」
涙が溢れた。
本当は、会いに来てくれるだけで嬉しかった。
「オイ、泣くほど嬉しいのかよ」
「…嬉しい、です」
泣いている顔を高杉に見られたくなくて、手で顔を覆うとぎゅっと抱き締めてくれた。その温かさに、さらに涙が流れる。
けれど。
なぜだかその日はぎゅっと抱き締め返すことができなかった。
「…凛、」
なぜだろう。
名前を呼ばれているのに、抱き締めてくれているのに心が壊れそうだ。
優しくされればされるほどに痛い。
もう、どうしたら、
「………晋助様」
「なんだ、」
「…すみません、やっぱり一人にしてください」
もう、高杉と一緒にいるだけで辛かった。
「どうした?」
「…一人になりたいんです」
「何かあったのか」
「何もありません。…ただ、一人になりたいんです。ごめんなさい」
「……そうかよ」
そう言うと、高杉は凛に軽くキスをして部屋を出て行った。
唇に触れると、まだ高杉の感触が残っている。
それがたまらなく悲しくて、さらに涙が溢れ出した。
こんなに大好きなのに、会いたくないと思ってしまうなんてわたしはどれだけ最低なのだろう。
さらに高杉を失望させてしまったに違いない。
考えれば考えるほどに自分の中の高杉の存在が大きくて、それ以上のものなんて自分には何もない。
涙が枯れるほどに泣いた。