第8章 あわよくば \❤︎/
今日も、高杉は出掛けたのだろうか。
あのことがあってから、すっかり落ち込んでしまって何も手につかない。
あまり部屋から出ていないし、食事も喉を通らない。
あの女性は、高杉とどんな関係なのだろうか。
あの女の人の顔が頭から離れない。
幸せそうに笑いながら高杉と会話をする大人の女性。
とても美人で手足が長くて、高杉はやはりああいう女性が好きなのだろうか。
とても、敵わないと思った。
あの女性と高杉が繋がっている証拠なんてどこにもないのに、どうしても高杉に問いただすことができない。
もし問いただして、最悪の結末になってしまったらと考えると怖かった。
それでも、高杉のことが大好きだし一緒にいたい。
高杉があの女の人を選んだとしても、この艦に乗っていられるだけで、側にいさせてくれるだけで幸せだ。
そんなことを考えて一日が終わる。
凛にとってあの人の存在はそれだけ大きなものだった。
ふと、部屋の窓から空を眺めると、今日は雲一つない晴天だった。
今の自分の心とは正反対だ。
「……わたしってバカだなぁ……」
それだけでまた悲壮感に襲われて、また涙が溢れそうになる。
と、その時
ガラガラッ
いきなり部屋のドアが開いた。
突然のことにドキリとして、すぐさま後ろを振り返った。
すると、なんとそこに立っていたのは高杉だった。
「……っ」
「凛」
なぜここに来たのだろう。
まさか、
「………」
「…久々に会った気がするな」
「……え?」
「…すまねえな、最近忙しくて構ってやれなくて。いじけてんじゃねえかと思ってな」
久しぶりに見た高杉の顔に久しぶりに聞いた声。
それだけでまた泣き出しそうになる。