第8章 あわよくば \❤︎/
ずっと考えていたら涙が溢れ出して止まらなくて、気がついたら眠ってしまっていた。
窓から差し込む陽の光が眩しくて目を細める。
起きて一番最初に思い浮かんだのは高杉の顔だった。
もしかしたら、これはわたしのただの勘違いなのかもしれない。
そう思ったら急に高杉に会いたくなって、凛は部屋を飛び出した。
着替えもせずに寝巻きのまま高杉の部屋へと急ぐ。
早く会いたくて、高杉の部屋へと駆けていった。
高杉の部屋に着くと、すぐに扉をコンコンと叩いた。
けれどしばらく待っても返事がない。
……まだ寝ているのだろうか。
そうだとしたら起こすのが申し訳なくて、凛は渋々自室へと戻ろうとすると、
「…晋助に用か?」
声がして後ろを振り返ると万斉が立っていた。
「あっ…!…はい。でも返事がないのでまだ寝ているのかと…」
「晋助なら朝早く出掛けた。どこに行くのかは知らんが今日は珍しく機嫌が良かったでござる。確か…人と会う約束をしているとか…」
「………」
あぁ、やっぱり、
「…どうかしたでござるか?」
「い、いえ…なんでもありません」
「…?」
「すみません、ありがとうございました」
高杉の顔どころか、もはや万斉の顔を見るのも辛かった。
一人になりたい。
誰の顔も見たくない。
ただそれだけで、気がついた時には走り出していた。
部屋にこもって一人になりたい。
涙を我慢していたら壊れてしまいそうだった。
勘違いだと思いたかった。
そんな願いはすぐに崩れ去って、心が抉られたように痛かった。
晋助様はきっと、あの女の人と、
そんなことを考えてしまって、溢れた涙が止まらなかった。
その日も、高杉は夜遅くまで艦に帰ってこなかった。