第2章 粋月
「…晋助様」
凛は勢いよく立ち上がると、足音の主のもとへ駆けていった。
「…晋助様、」
満月と同様、久しぶりに見るその姿に凛は心を踊らせた。
「晋助様、会いたかったです…!」
何度も名前を呼びながらそう言うと、凛はその男ーーー高杉晋助に抱き着いた。
それに答えるように、高杉も凛の肩を抱く。
「ずっとここで待ってたのか?」
「はい、晋助様に早く会いたくて今日一日中ずっと胸を踊らせておりました」
「フッ、可愛いこと言うじゃねえか」
高杉がグイッと凛の身を引き寄せると、凛も甘えるようにさらに高杉の胸に顔を埋めた。
愛しいその人の体温が伝わってきて、心も体も熱くなる。
こんなに自分の気持ちを昂らせるのは、この人以外にいない。
「…俺も会いたかったぜ」
耳元でそう囁かれて、一気に頬が熱くなるのを感じた。
「こっちを向け」
そう言われて顔を上げると、鋭い目つきの高杉と目が合った。
包帯で隠れている左目は見えないが、その顔はいつもの高杉と何ら変わりはなくて、恥ずかしくなって目を逸らそうとすると強引に顔をこちらに向かされて嫌でも目が離せない。
肩を抱かれたまま高杉の瞳に射抜かれて動けずにいると、そのまま頭を掴まれて深く口付けられた。
「んっ……んぅ…」
高杉の舌が歯の隙間を強引に割って入ってきて、口内を犯される。
凛は拒むことができないままゆっくりと高杉の舌に自分の舌を絡めた。
互いに舌を絡めながら無我夢中になっていると、どちらのものかもわからない唾液が口の端を伝った。
ようやく口を離すと二人の舌を銀糸が繋いで、それだけでまた体を昂らせる。