第7章 煙管の味
「けれど、晋助様が大切にしているものをわたしが触ってしまっては…」
「構わねえさ」
そう言うと高杉は自分が吸っていた煙管を差し出した。
落とさないように傷つけないように、大切に両手で持って煙管を眺めてみた。
思っていたよりもとても軽くて使いやすそうだ。
「コイツにも吸い方ってのがある。階級によって持ち方も違う。…お前は…そうさな、俺と同じでいいんじゃねえか」
高杉はいつも、羅宇の下部分に右手を添えて持っていた。
その姿を思い出して、凛もなんとなく真似てみる。
「そうだ。あとはゆっくり吸ってみればいい」
「………」
初めての煙管に、少しドキドキした。
恐る恐る口を付けて、ゆっくりとほんの少しだけ煙を吸った。
そしてすぐさま口を離して煙を吐く。
「…どうだ?」
「…これが煙管の味…」
これがいつも高杉が吸っている味だ。
心酔し、尊敬する人と同じ味を知って、また一つ高杉に近付けた気がした。
「…思っていたよりもキツくありません。それになんというか…甘いです」
「そうだな、甘えな」
高杉がこんな味を吸っているとは意外だった。
煙草のようにキツくないし嫌な臭いもしない。
これで分かった。だからいつも、
「クセになりそうか?」
煙管の味をしみじみと感じながら物思いにふけっていると、高杉が煙管を持つ右手に自分の手を添えた。
「ずっと吸ってれば様になるぜ。お前でもな」
「…もうっ、子供扱いしないでください」
高杉は凛の手からひょいと煙管を取ると、まだ葉に火がついたものを口にした。
その横顔はいつ見ても色っぽくて、ドキドキしてしまう。
煙の味がする唇に口付けてみたいとさえ考える。