第6章 HAPPY VALENTINE'S DAY \❤︎/
「ってわけで失敗してしまって…材料も必要分しか買ってなくて…うっ…」
「………」
「すみません、どうにか作り直すのでもう少し待ってください…」
涙目になりながら高杉の前で正座をして理由を話す凛に、高杉は大きな溜息をついた。
その高杉の溜息を聞いていると、自分が幻滅されているのだと実感して涙が溢れそうになった。
一番大切な人へ贈るはずのチョコレートを渡せず、その上こんなことになってしまうとは、なんて最低なんだろう。
きっと目の前の相手はそんな自分に幻滅しているはずだ。
「…謝るこたぁねえ。俺のために作ろうとしてくれたんだろ?なら嬉しいってもんだ」
「……っ」
高杉から返ってきた意外な言葉に、さらに目頭が熱くなる。
絶対に幻滅されるのだと思っていたのにそうではないらしい。
「別に幻滅なんてしてねえよ」
凛の心を読み取るように、高杉はあとにそう付け加えた。
そう言ってくれる高杉のためにも、早くチョコレートを渡さなければいけない。
「…また作り直します!どうにか材料を集めて日付が変わる前には渡しますので待っていてください」
強くそう言って、勢いよく立ち上がると凛は台所へと向かった。
ここは艦の中だ。今から材料を調達しにいくことはできない。だがなんとか工夫を凝らして高杉に渡せるものを作らなければならない。
さっき湯煎している途中だったとけたチョコレートを取り出してどうにか作り直そうとすると、座っていた高杉が近づいてきてとけたチョコレートを凝視した。
「…これで十分じゃねえか」
「…え?」
「無理に作らなくてもこれがあれば十分だ。」
高杉はそう言うと台所に立つ凛の後ろにまわって、後ろから凛の腰に手をまわした。