第6章 HAPPY VALENTINE'S DAY \❤︎/
さっそく部屋に戻ると、凛はまた台所に立ってチョコレートを作り始めた。
昨日は高杉に渡すために特別に生チョコやらクッキーやらをたくさん作る予定だった。だが張り切りすぎていた故に見事に焦がしてしまって、とても渡せる状態ではなくなってしまった。
鬼兵隊の全員に渡そうと頑張って作っていたら全て作り終わった頃にはもう既に朝方になっていて、少し仮眠をとってから作ろうと思っていたのだがそのまま眠りこけてしまったのだ。
そのまま飛び起きて、とりあえず作った分を渡すのに艦の中を走り回っていたらこんな時間になってしまった。
今度こそ失敗しないように、さらに丁寧に、ついでに愛情も込めて作る。
少しでもおいしいものを食べてほしいから。
そう思いながら冷蔵庫から材料を取り出そうとして気付く。
重要な材料が、ない。
そうだ、失敗しない予定で買ってきたから必要分しかない。
チョコレート以外、その場に何もないのだ。
もはや絶望に近いものを感じて、凛はその場に立ち尽くした。するといきなりガラッとドアの開く音がして、凛は慌てて我に返りながら恐る恐る部屋のドアを覗いた。
するとそこには今一番会いたくない、あの人が立っていた。
「しっ!晋助様!」
「万斉達がお前からチョコレート貰ったって騒いでたぜ。俺にはねえのか?」
「えっ!!!」
できることなら会いたくなかった。だがそれはもう無理らしい。凛は片手に持っていたチョコレートを後ろに隠した。
「オイ凛、」
「そのっ!違うんです!」
「何が違うんだよ」
「…実は……」
ズカズカと部屋の中に入ってくる高杉を止めるように、凛は後ろ手に持っていたチョコレートを前に突き出しながら高杉に渋々理由を説明した。