第5章 いいものですね。
そんなことをずっと話していると、頼んだものが運ばれてきてさっそく口にするとその甘さとおいしさに頬がとろけ落ちそうになった。
「ちょーうまいっス!」
また子も目をキラキラとさせて、こんなにもまた子の満面の笑みを見るのは久しぶりで、凛もなんだか嬉しくなった。
「凛もおいしいっスか?」
「とってもおいしいです!」
するとまた子も笑って、
「今日凛を誘ったかいがあったっスね!」
江戸に出るのも、また子と楽しく遊ぶのも久しぶりで全てが新鮮で楽しくて、とても満ち足りた気分になった。
その後も楽しく話しながら食べて、気付けばもう凛もまた子もペロリと完食した。
「はぁ〜うまかったっス〜」
「とてもおいしかったです。今日は連れてきてくださってありがとうございました!」
「晋助様に説得して連れてきて良かったっスね。」
「晋助様ったら、そんなに心配する必要なんてないのに」
「それだけ凛のことが大切なんスよ。…そりゃそっスよ、わたしたちは攘夷志士なんだから」
最後だけ小さな声で囁くように言うまた子に、なんだか少し寂しいような気もした。
「わたし達が普通の女の子なら、周りなんて気にせずに町を歩けるんスかね…」
「………」
きっと、答えは『YES』だろう。
だけど何故かその時、凛は素直に頷くことが出来なかった。
「……でもわたしは、」
その時、
チャリンッ
いきなり目の前のテーブルの上に何かが落ちてきて、びっくりして凛は反射的に目を背けた。
「っ……」
「あ〜、悪ぃ悪ぃ」
ふとテーブルの上を見ると、そこには100円玉が転がっていた。
この声の主が落としたのだろう。それを拾い上げて声のする方に渡そうと目を向けると、
「…っ!!!」
そこには銀髪の侍がいた。