第5章 いいものですね。
店内もとても女性向けで、メルヘンチックな店内は見渡す限りほとんど男性はいなかった。
いると言ってもカップルだろう、女と一緒に席に座っている男だけで、男一人で来ている人など一人しかいなかった。
故にとても目立つ。
「バレないようにするっス!」
また子は小声で言うと、店員が置いていったメニューを開いた。
一緒に見ると、そこには眩しいほどの甘味の写真が載っていて、どれも素晴らしくおいしそうだ。
チョコやクリームにフルーツ、抹茶やあんこまでよりどりみどり。
どれにするか迷ってしまう。
「…決めたっス!」
目移りするほどの甘味の写真を眺めているとまた子はもう決まったらしく、写真を指さして言った。
「わたしは…」
優柔不断だからすぐには決められなくて、キョロキョロと写真を見ると一際目をつくものがあった。
「わたしはこれにします!」
その写真を指さして言うと、また子が呼び鈴を押して店員を呼んだ。
店員に注文し、去っていくとまた子はテーブルに置いてある水を一口飲んだ。
「しっかし、よくこんなところ一人で来るっスね、白夜叉は。どんだけ甘いもの好きなんだよ」
確かに、明らかに女ウケを重視してできた店に男ひとりで来るとは、よっぽど甘いものが好きだとしか思えない。
これは余程の甘党なのか、それとも流行に敏感なのか…
「ったく、アイツさえいなけりゃもっとゆっくり楽しく食べられたってのに!」
「まぁいいじゃないですか。楽しく食べましょう」
「それもそっスね。」
久しぶりに江戸に出て美味しいものを食べようと言うのに、文句ばかり言っては飯も不味くなるというものだ。