第33章 おかえり
「そういえばとても気持ちよさそうに寝てましたけど何か夢でも見てたんですか?」
布団を畳みながら凛は言った。
あの幸せな夢をなんとなく思い出して、高杉も口元に笑みを浮かべた。
「あぁ。すげェいい夢だった」
「ならよかったです。あ、そういえば坂本さんから昨日手紙が来てたんでした!」
『高杉晋助殿』
凛から手渡された茶色い封筒にはそう書いてあった。
身支度をして凛が朝食を作っている間に封を開けて坂本からの手紙を読む。
そこにはなんてことないいつも通りの坂本らしい文と、最後には
『いつか高杉くんも一緒に宇宙をまわりましょう』
そう書いてあったが正直もうしばらく宇宙には行きたくない。そう心の中で返事をして手紙を閉じた。
台所を見ると楽しそうに歌を歌いながら料理をする凛がいて、頬杖を付きながら眺めていると醤油や味噌の香ばしい匂いに鼻孔をくすぐられる。
「随分と楽しそうじやねェか」
「だって久しぶりにまた子さんと武市さんに会えるんですもん!」
「…そうだな」
「…それに、大好きな人のためにご飯を作ることってこんなに幸せなんだな〜って…」
そう言いながら味噌汁をよそう凛がたまらなく愛しく感じて高杉は立ち上がって凛に歩み寄ると、後ろから小さな体を抱きしめた。
「…これからは、これが毎日になる」
「…そんなの、幸せすぎて死んじゃいそうです」
「…少し前なら何を腑抜けたことをと言ってやるところだが…俺も随分と平和ボケしちまったらしい。…お前に似てくるなんざ」
懐かしい味噌汁の匂いに心も体も幸福感で満たされる。
またこの味を味わえることが、高杉にとっても今は何よりも心を満たしてくれるものの一つだった。