第33章 おかえり
目を覚ますと、辺りは既に明るくなっていた。
障子の隙間から差し込む朝日が心地よい、清々しい朝だ。
ずいぶん長く眠っていたようでハッキリしない意識のまま高杉は左目をこすった。
腕の中を見るとまだ幸せそうにすやすやと寝息をたてる愛しい人の姿があって、高杉は起こさぬようそっと頭をなでた。
乱れた布団を戻して凛の肩まで掛けると、凛はもぞもぞと体を動かした。
「ん〜…」
寝惚けているのだろうか。
鼻から抜ける息に唸るような声を出して、ゆっくり目を開けた凛は寝起きのとろんとした目でぼーっと高杉の顔を見た。
「…んぁ、晋助さま、?」
「…すまねェ。起こしちまったか」
「いーえ、大丈夫です…もう朝ですか?」
「あァ。今日もよく晴れやがった」
「ほんとだ。小鳥が鳴いてます…」
「もう一眠りするか?」
「だめですよぉ…今日はまた子さんと武市さんが来るんだから…起きないと」
そう言うと、凛は高杉の腕をぎゅっと抱きしめた。
「…起きれてねェじゃねえか」
「…あと10分したら起きます、から…」
そう言うと、凛はまた目を閉じた。
寝惚けていつもより甘えてくる彼女につられるように高杉も両目を閉じると、微睡みの中微かに夢を見た。
桜の下皆で集まって酒を酌み交わしながら談笑し、自分の隣には凛がいて、その情景を両の目でしっかりと焼き付ける。
そんな幸せな夢を。
「…晋助様?」
「……」
「もう20分経ちましたよ」
「…すまねェ」
「いえいえ、わたしは起きますけど晋助様は寝ててください」
「いや、俺も起きる」
そう言うと、高杉は欠伸をして布団を出た。