第33章 おかえり
「今日の晋助様、なんだか楽しそうです」
「…あぁ。楽しいよ」
「…わたしも楽しい」
その後もみんなで食べて飲んで笑いあって、気付けば夜になっていた。
何回目かも分からない宇野をして、賑やかな居間を背に高杉は一人縁側で月を眺めながら酒を口にした。
少し冷たい風が頬をなでて、酔いで火照った体をほどよく冷ましてくれる。
穏やかな夜が気持ちよくて、高杉は猪口に入った酒をそのまま飲み干した。
「高杉」
声が聞こえて隣を見ると、先程まで宇野をしていた銀時が隣に座っていた。
「俺が注いでやるよ」
その言葉通り銀時は高杉の猪口に酒を注いだ。
「…どういう風の吹き回しだ?」
「ただの親切さ。お前も俺に注いでくれよ」
「……」
高杉は徳利を手に取ると、銀時の持つ猪口に酒を注いだ。
銀時はそれを少し飲んで、大きく輝く月を眺めて言った。
「まさか、ほんとにお前と酒を酌み交わせる日が来るたぁ思わなかったぜ」
「だろうな。俺も思わなかった」
「お前は酒を酌み交わすより俺から一本取る方がいいんだろうが、今日くらい休戦もいいだろ」
「あァ。存外悪くねェ」
少しの沈黙が流れる。
後ろでは賑やかな声が聞こえてきて、高杉は少しだけ笑った。
「…銀時、てめーとは昔から顔を会わせるたびやり合ってきたからな。今さら話そうったって話すことなんざねえな」
「話さなくたって俺は高杉、お前と酒を酌み交わせるだけでいい」
「…そうだな。俺もそう思ってた」
「どうやら、生まれ変わって性格まで変わっちまったらしい」
「そりゃ俺もいい歳だ。歳を重ねりゃちったあ素直になることも覚える」
高杉のその言葉に、銀時は口元に笑みを浮かべた。