第33章 おかえり
「…だからなんだ…ってオイ凛、」
凛の目からは一筋の涙がこぼれ落ちた。
自分の姿を見て泣き出した凛に焦ったのか、高杉が手にしていた酒を置いた時。
「…晋助様が…笑ってる……」
一度こぼれ落ちるとひとつ、ふたつととめどなく涙がこぼれ落ちて止まらない。霞んで前が見えなくて、凛は着物の袖で瞼をゴシゴシと拭いた。
「っ……」
「…俺が笑ったらおかしいかよ」
「違いますっ…ほんとにほんとに、うれしくてっ……」
「………」
「晋助様が、また昔みたいに笑ってくれることがほんとにうれししいっ…」
泣きながら笑う凛を、高杉は優しく抱きしめた。
「…凛、」
名前を呼んで、涙を拭うと本当に幸せそうな顔で凛は笑った。
「まったく、泣かせてくれるではないか高杉ぃぃ……」
「…悪ガキみてーな顔で笑いやがって」
あの頃の笑顔を、もう一度見たいと思っていた。
ただの悪ガキのような、この笑顔を。
凛だけじゃない。
銀時も桂も、きっとそう思っていただろう。二人の顔を見ればよく分かる。
この情景に新八と神楽とエリザベスも微笑んだ。
「あ〜〜……クソ、飲みすぎて前が霞んできやがった…」
「銀ちゃん、泣いてるアル」
「な、泣いてねーしっ!目から酒が出ただけだし!」
「見苦しいですよ、銀さん」
「俺も断じて、泣いてなど…うっ」
「お前は引くほど泣いてんだろーが」
本当の意味で昔に戻れたような気がして、懐かしいこの感覚に凛と高杉を顔を見合わせて笑った。