第30章 【最終章】夢か現か \❤︎/
「…」
ゆっくりと目を開けると、もう既に辺りは明るくなっていて、眩しくて顔を顰めながら高杉は素顔のままの右目をこすった。
確か、先程まで凛と夜中に起きてしまって、それから二人で同じ布団で眠りについたはずだ。
だが、自分の腕の中に凛の姿はなかった。
起き上がって凛の姿を探すと、奥の海が見渡せる窓のそばで立って外を眺めていた。
「…凛」
「…あ、晋助様おはようございます」
「…何してんだ」
「海を見てたんです。朝日が反射してキラキラしててとても綺麗ですよ、晋助様も見てください」
まだ昨日の生まれたままの姿だろうか。
素肌の上から大きな絹の布をまとって、青い空と青い海を眺める姿はまるで、
「…綺麗だ」
「もう、晋助様ってばまだ見てないじゃないですか」
「…すげェ綺麗だ」
高杉も立ち上がって、凛と並んでこの海を眺めた。
海は朝日を反射してキラキラと光って、宝石が散りばめられたかのよう。
「晋助様がこんな時間まで寝てるなんて珍しいですね」
「珍しく目が覚めなくてなァ。悪かった」
「いえいえ、わたしは晋助様の寝顔が見られて嬉しかったです」
「…見るんじゃねえよ」
「ふふ、今日くらいいいじゃないですか。朝まで寝てられたんだから」
そう言いながら笑う凛を後ろから抱きしめて、また海を眺める。
すると凛の手が抱きしめる高杉の手に触れた。
「…晋助様、朝からどうしたんですか?寝ぼけてるんですか?」
「寝ぼけてなんかいねーよ」
「朝から甘えてくるなんて珍しい」
「朝にいるのが珍しいだけだろ。いいから黙って抱きしめられてろ」