第29章 鬼が哭いた日 \❤︎/
もう何時間経っただろう。
それすらも分からなくなっていた。
「……」
荒く息をつきながら涙で真っ赤になった目の凛を見ると、微かに目が合った。
その途端力なく微笑まれて、すぐに顔をそらした。
この笑顔を、めちゃくちゃにしてやりたい。
めちゃくちゃに泣くまで抱いて、いっそのこと俺を嫌いになりゃあいい。
そうすればもう二度とあの時と同じ思いをすることはないだろう。
だがそうやって酷く心と体を傷つけても、きっとお前はまだ俺を好きだと言って俺についてこようとするだろうな。
そう思った途端、大きな罪悪感に苛まれて、自分のした行為がとてつもなく凛を傷つけてしまったような気がして高杉はその細い体をきつく抱きしめた。
「悪い、痛かっただろ、」
「……いえ、大丈夫です」
「凛、」
「…何も言わなくてもいいです。気の済むまでこうしててください。…でも、いつも一人で背負い込んでしまうのも晋助様の悪いところですよ」
「……」
「…よしよし」
優しく頭をなでられて、一時だけ子供に戻ったような感覚になる。
あの時はいつだって頭をなでてくれる存在がいた。
少しでも吐いたら、楽になれるだろうか。
けれど、コイツに変な重荷を背負わせたくない。
「…わたしは、いつでも晋助様の味方ですよ。何かあったらわたしにも頼ってください。わたしだって少しくらい晋助様のお役に立ちたい、です」
「……」