第29章 鬼が哭いた日 \❤︎/
「…ん…」
多少の肌寒さに、凛は目を覚ました。
見ると、自分は一糸纏わぬ姿で布団も半分程度しかかけずに眠っていたらしい。
恥ずかしさと寒さでまた布団にくるまった。
「…あれ、晋助様?」
昨日のことを思い出して、左右を見てみてもそこに高杉の姿はなかった。
昨日は確か、高杉に求められて情事後そのまま眠ってしまったはずだ。この高杉の部屋に本人の姿がないということは、もうどこかへいってしまったのだろう。
いつもの事だがちょっぴり寂しさを覚えて起き上がると、凛は軽くシャワーを浴びて着物に着替えた。
時刻はまだ7時過ぎだ。
まだ艦の中になら高杉がいるような気がして心当たりのある場所を手当たり次第探すと、やはりそこには高杉の姿があった。
いつも通り一人煙管を吹かすその姿に胸が高鳴って、凛は恐る恐る背後から声をかけた。
「…晋助様?」
「…どうした」
「あの、朝ごはん食べましたか?」
「…食ってねェ」
「ならこれから皆さんの分も作るので晋助様も一緒にどうですか?」
「……すまねえな、腹減ってねえんだ」
「…そうですか、ではお腹がすいたらいつでも仰ってくださいね」
「あァ」
「では失礼します」
その後ろ姿からは、なんだか切なさにも似た感情を覚えた。
いつもよりもなんだか声色からも覇気がないような気がして…
少しだけ心配になったが、また昼になったら声をかけてみようと凛はそのまま台所へと向かった。